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地味で滋味・乾物よもやま話

山上 公実/ Hiromi Yamagami

実家は鮮魚・乾物店。飲食店での調理経験を経て、現在は魚を使ったワークショップ・味噌作りの会・家庭料理教室等を開催中。

乾物よもやま話]よもやま話その3 乾物と行事食

2015.12.23

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今年も残すところあと僅かとなりました。お陰さまで今年スタートした乾物COOKINGは沢山の方に興味を持っていただき、日ごろの食事にどんどん乾物を取り入れてもらえるようになりました。「この間教えてもらったの、何回も家で作っています!」というコメントが、一番嬉しいです。

 

さて、もうすぐお正月ですが、うちの店ではお正月前の一週間が、一年のうちで一番忙しい時期となります。お節料理に使う食材をと、日ごろ来て下さるお客さんや、年に一度この時ばかりはと遠方からわざわざ買いに来て下さるお客さんで一杯になります。普段置いていなけれど、この時期は棒だら、数の子、鯛の子、はまぐり、田作り、昆布巻き、黒豆煮、竜飛巻き、祝い鯛、鏡餅、勝ち栗など、いかにもお目出度い感じのものが店にぎっしりと並びます。小さい時からこの時期はお手伝い。お客さんから「これとこれ、200gずつちょうだい」と言われたら、ささっと感覚で、求められた通りの量を量らずとも容器に入れるのを得意としてきました

  

乾物は古くから行事食に使われていますが、お正月のお節料理にも、沢山の乾物が利用されてきました。昆布巻きの昆布やかんぴょう、田作りのごまめ、干し数の子、棒だら、豆、餅、勝ち栗、ごま、鰹節、干し椎茸などです。そしてお屠蘇に入れる生薬(白朮・山椒・桔梗・肉桂・防風・陳皮)も乾いているので乾物と言えます。

 

年末に店頭に並ぶものの一つに、棒だらがあります。京料理の棒だらと海老芋を炊き合わせた「いも棒」は、お節料理にも出てくるものですが、年に一度のご馳走、私の大好きなものの一つです。この棒だらは、内臓などを処理した「真だら」や「すけとうだら」を真冬の寒風で凍結乾燥させたもので、干し上がると棒のようにカチンコチン、まさに棒だらの名前がぴったり、とても硬いです。乾燥させることで、生のたらにはない独特のうまみが生まれ、長期保存の効く食品となります。カチンコチンなので、戻すのに、水につけて(毎日水を取り替えて)1週間ほどかかります。凄いですね。

 

戻した棒だらと芋を一緒に炊くことで、芋に棒だらの良い出汁がしみこみ、棒だらのゼラチン質が芋の煮崩れを防ぎ、芋のアクが棒だらを柔らかくするという相乗効果も生まれます。これぞ出会いもの、「いも棒」は京都の名物料理として親しまれています。

 

・・・と、こんなことを書いていると、いも棒が食べたくなってきました。

 

来年の乾物COOKINGは「豆の回」からスタートします。馴染みのある豆から普段見たことのないような豆まで色々な豆をご紹介し、その中から5品ほど、豆料理をみんなで作ります。豆好きの方、豆料理のレパートリーを増やしたい方大歓迎です! 1月31日(日)と追加で2月11日(祝・木)開催です。

[乾物よもやま話]よもやま話その2 乾物でおやつ

2015.11.25

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随分昔の話です。私の子供のころのおやつといえば・・・おにぎりせんべい、じゃこ、そして塩昆布でした。今思うとかなりしぶいおやつ(?)です。店に立つ母のもとへ「おなかすいた~」と走っていくと、「おじゃこでも食べとき」と、母は一つかみのちりめんじゃこをよくおやつ代わりにくれたものでした。ご近所の仕立て屋さんのお店に遊びに行けば、よく可愛がってくれたおばさんが「昆布でも食べよし」と、塩昆布をささっと湯呑みの中のお茶で洗って塩を落とし、食べさせてくれました。小さい時から、こんなふうにちりめんじゃこや昆布を食べて、海からのミネラルをおやつ感覚で摂っていたのでした。

 

母がよく作ってくれた「ふりかけ」もお腹がすいた時には重宝しました。さけやたらこを焼いて身をほぐし、から煎りします。そこにごまやちりめんじゃこ、乾燥わかめなどの乾物を加えます。これをいつでもささっとふりかけられるように瓶に詰めておくのです。学生の頃、夕飯までお腹が持たないときは、よくこれでお茶づけを食べたものです。

 

おやつに、ほっとしたいときに、乾物を利用してみませんか。昔ながらの干し芋や、干し柿などのドライフルーツ、ナッツ類などをそのまま食べるのもいいし、ちょっと手を加えて、麩のフレンチトースト風なんかも美味しいですよ。牛乳で戻した麩を溶き卵をつけてバターで焼いてはちみつをたらしたら、ふんわり麩のフレンチトーストのできあがりです。板麩(板状にのばした麩)をピザの生地代わりに使って、ちりめんじゃこをチーズと一緒にトッピングしたピザトースト風も美味しいです。他にもひじきやごま、切干し大根をたっぷり入れたおやき、ミックスナッツといりこをフライパンでから煎りし、みりんと醤油を入れてからめ、お好みでカレー粉をふりかければポリポリ美味しい栄養豊富なスナックになります。最近では、麩でかりんとうも作るようになりました。

 

次回の乾物クッキングでは、「麩」を使った簡単料理をお教えします。麩のかりんとうも作りますよ。12月20日(日)は定員に達しましたが、12月27日(日)のお昼からも追加で開催することになりましたので、ご興味ある方、どうぞご参加下さい。

[乾物よもやま話]よもやま話その1 乾物の魅力

2015.10.23

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はじめまして! 乾物COOKING講師の山上公実です。

Social Kitchenで乾物を使った料理を月一回教え始めて半年がたちました。
これからはこのHPでもいろいろな乾物の紹介、そしてその魅力をお伝えしていきたいと思います。
 
さてさて、みなさんは乾物を日常的に使いますか? そして乾物と聞いてどんなものがぱっと思い浮かぶでしょうか。
高野豆腐・切干し大根・麩・寒天・ごま・豆・干しシイタケ・ひじき…色々ありますね。これらは一見地味でありながらとっても滋味深いものです。「乾物は地味で滋味!」と私はうたっています。
 
干しシイタケにしても昆布にしても、乾燥させることでとても良い出汁がでます。切干し大根にしてもそう。戻した水をちょっと飲んでみてください。自然の甘味が出ていてとても美味しいので、私はその戻し汁を味噌汁に入れたり、煮物に加えたりもしています。乾物は、乾燥する過程で熟成が進んで香りやうまみ、栄養価が生の状態の時より優れたものになります。例えば、大根は切干し大根にするとカリウムは14倍、カルシウムは22倍、鉄分は30倍以上、ビタミンB1は16倍、ビタミンB2は20倍にも増える、というデータがでています。特に太陽のエネルギーをたっぷり浴びた乾物は、栄養価はもちろんですが、実に美味しいです。こんな細かいことを知らずとも、先人たちは冷蔵庫がなかった時代に、食糧をいかに確保するか、保存するかということが重要だったので、「干す」「乾かす」ということを繰り返し、乾物を食べ、栄養を摂ってきたわけです。
 
乾物のいいところはまだまだあります。たとえば、すでに刻んであったりするので、ゴミが出ない。そして刻む手間が省けます。そして保存がきくので買いだめが出来ます。しょっちゅう買い物が出来ない忙しい人、近くに店があまりない人には特に重宝します。切干し大根、乾燥わかめ、削りガツオ、麩、そして味噌をお好みの量お椀に入れてお湯を注げば、即席具沢山栄養たっぷりの味噌汁が作れますよ。そう、乾物は元祖「インスタント食品」とも言えるでしょう。
 
昔の人はビタミンやミネラルを海や山の乾物からも摂ってきたのですが、食生活の変化や乾物離れから、現代人にはビタミンやミネラル(カルシウム・鉄・亜鉛・マグネシウムなど)が不足しがちだと言われています。今こそ、改めて乾物を見直し、普段の食事に取り入れていただきたいものです。
 
最後に、乾物は非常時にもとても役に立ちます。災害が起こった時など、よく食べられるのがカップラーメンですよね。カップラーメンは非常時にお湯を注ぐだけでお腹を満たしてくれるありがたいものですが、これだけでは栄養がどうしてもかたよってしまいます。そこに乾物のわかめや切干し大根、高野豆腐など、具材をたっぷり一緒に入れてみてください。良い天然の出汁も出ますし、栄養もつけられ、非常時でもほっと一息、気力が取り戻せると思うのです。軽くて保存がきき、持ち運びも便利なので、いつなん時でも使えるように、いくらか乾物を常備しておくことをおすすめします。
 
・・・と、なんともありがたい乾物ですが、今回はこの辺で。次回の乾物クッキングは12月20日(日)、テーマは麩(ふ)です! ご興味ある方はどうぞ、ご参加下さいね。

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