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夢であいましょう

原 智治/Tomoharu Hara

1980年、京都市生。大学で画像情報システムを専攻。卒業後、メーカー勤務を経て、京都市入庁。現在は文化行政を担当。

Tomoharu Hara was born in 1980. He graduated from university where he majored in Image Information System. Tomoharu is currently works for Kyoto City, reforming the city's public hospitals.

[夢であいましょう-ある公務員の育児日誌] vol.6

2010.07.31

 赤ん坊と暮らす者の間では、時々、睡眠のことが話題になります。それは、しばしば、鶏をくびり殺すような恐ろしい出来事として語られるのです。「こちらでは朝4時に叩き起こされます。」「昨夜、うちでは寝るまでに2時間もかかりました。」「あちらでは1時間ごとに起きて泣き叫ぶそうですよ。」云々。真夜中、小さき者たちは、グレムリンのように我々を悩ませるのです。
 乳児との生活では、最初は慣れないこともあって、うまく睡眠時間を確保できないことがあります。2、3日ならともかく、何週間もよく眠れぬままに赤ん坊の世話をするのは、なかなか大変なことです。

 幸いなことに、娘は寝つきのよい性質(たち)です。お風呂に入ってミルクを飲むと、もうほんの数分で寝入ってしまいます。が、例に漏れず、朝はとても早い。
 7ヶ月目に入り、彼女はいよいよ活発に動き回るようになってきました。横に頃がるだけではなく、大変な勢いで前にも進みます。匍匐前進。雄叫びを上げながら突進する様は、たとえば、アパッチ族の勇猛な戦士のことを想わせます。今では、多少高さのある障害物も、呻吟しつつ、見事に乗り越えます。
 午前5時、娘の1日が始まります。まず、ズンドコと壁を蹴って回り、部屋中をうろつき、毛布を舐めまわします。しばらくすると、大きな声で私や妻を恫喝し、髪を引っ張り、顔面を掴み、いよいよ暴力に訴え始めます。仕方なく、我々は寝床から這い出し、丁重に、彼女のもとへ朝食を運ぶのです。
 ドンドルマのように粘りつく眠気。我々と布団の間に、眠りへの欲望が、細く長い糸を引いています。しかし、それはアパッチの斧によって無残にも断ち切られ、我々は外の世界へ放り出されるのです。

 先日、娘を連れて、初めて1泊2日の旅行へ出かけました。バスや電車を乗り継いで4時間程、目的地を回り、夜、無事にホテルに辿り着きました。彼女は、いつも、9時頃には眠りにつきます。シャワーを浴び、ホテルのベッドをコロコロと三転し、もう早や、彼女は夢の中です。薄暗い部屋の中、妻は、大河ドラマ『龍馬伝』を小さな音で観ています。修学旅行で、先生に隠れてテレビを見る女生徒のようです。私は横目でそれらを眺めながら、いつの間にか、寝入ってしまいました。

 どうか今夜も、娘が安らかに眠りますように。願わくば朝の7時まで起きませんように。

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