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夢であいましょう

原 智治/Tomoharu Hara

1980年、京都市生。大学で画像情報システムを専攻。卒業後、メーカー勤務を経て、京都市入庁。現在は文化行政を担当。

Tomoharu Hara was born in 1980. He graduated from university where he majored in Image Information System. Tomoharu is currently works for Kyoto City, reforming the city's public hospitals.

[夢であいましょう-ある公務員の育児日誌] vol.3

2010.05.24

 今回は子どもの成長の話。

 娘が生まれて、6ヶ月目を迎えようとしています。
 彼女は、最初は、仰向けに寝転んだまま手足もうまく動かせませんでしたが、今では、腹這いになって、おなかを中心に360度回転することができます。さらに寝返りを組み合わせて、どちらへでも転がっていけるようになりました。西部劇に出てくる転がる草のように、彼女は、コロコロと床の上を転がっていきます。
 乳児というのは驚くべき成長を見せるものです。

 生まれてすぐの2ヶ月程は、子どもも親も慣れていないので、なかなか大変な時期です。子どもは未知の世界を前に、ことあるごとに泣き叫びます。こちらも、その都度、どうすれば泣き止むか、試行錯誤を繰り返さなければなりません。(子どもを抱えてヒョコヒョコと動いてみたり、眠るときは枕代わりに手を添えてみたり。藁にもすがる思いで、思いついたことは何でもやってみます。)保護者の体力を削り取るというのは生存戦略的にどうかと思うのですが、そんなことは全く考慮せず、24時間、断続的に子どもは泣きます。眠気でぼんやりした頭に、突き刺さる絶叫。これは結構な体力と忍耐力が要ります。
 「他人が携帯電話で話すのを聞くと苛々する」ということがありますが、これは会話の内容が半分だけしか聞こえず、発言が予測できないことに起因するのだそうです。あるいは、他言語での会話も、(少なくとも僕にとっては、)相当のストレスになることがあります。コミュニケーションを制御できないということは、それだけで、とても辛いものです。生まれたばかりの子どもは、非言語的なものも含め、コミュニケーションの方法をほとんど共有していません。多分、このことは、お互いの辛さの大きな原因になっているのでしょう。
 それだけに、子どもがこちらを認識し始める頃の喜びは大きなものです。僕の動きに合わせて、扇風機のように首を振る娘。名前を呼べば振り向きます。ありがたいことです。

 乳児というのは驚くべき成長を見せる、と書きましたが、本当に驚くべきなのは、彼女たちの勤勉さでしょう。
 彼女は片時も休まず訓練をし、学び、吸収しようとしているように見えます。(遊びたがっているようには見えません。)眼前のものに手を伸ばし、とりあえず舐め倒すのも、すべて世界の理解のための弛まぬ努力なのではないかと思います。
 彼女に経験をしていただくこと。それもできるだけ多様で、複雑で、思いもかけないような諸々を提示すること。何も確証はありませんが、僕は、それが子どもにとって、基本的に善いことである、と感じます。

 この数日、娘は口をプチュプチュと鳴らすことに取り組んでいます。甲子園を目指す球児のように、とても真剣です。明日には、彼女はそのスキルを完全にマスターし、次のステップを独自に見出していくことでしょう。
 世界は広大で、記号の体系は極めて複雑なものです。が、それでもなお、子どもは、いずれそれらの全てを踏み越えていくのではないか、と僕は勝手な夢を描いています。

ハラトモハル

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