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淡水録

原 智治/Tomoharu Hara

1980年、京都市生。大学で画像情報システムを専攻。卒業後、メーカー勤務を経て、京都市入庁。現在は文化行政を担当。

Tomoharu Hara was born in 1980. He graduated from university where he majored in Image Information System. Tomoharu is currently works for Kyoto City, reforming the city's public hospitals.

[淡水録] vol.27 行政による文化芸術の支援について1

2010.08.03

 行政が文化芸術を支援するのは何故なのだろうか。
 平成22年度、文化庁予算は1,020億円に上る。地方自治体の文化関連予算はその3倍以上と思われる。これは、他国と比較すると必ずしも多いわけではない(※1)が、それでも、相当の額と言っていいだろう。バブル崩壊後、このような行政の文化芸術関連支出には、常に懐疑的な声が付いて回るように思える。その懐疑は、この十数年の、地方自治体の文化関係経費の落ち込み(60%以上落ち込んでいる。)により、可視化される(※2)。
 果たして、行政の文化芸術支援について、"合理的な"根拠はあるのだろうか。この種の議論は、最終的に個人的志向のレベルに回収され、水掛け論に終わってしまうことが多いように思うが、改めて、整理し、検証しておきたい。

 近年、大阪府、滋賀県で文化芸術関連予算の削減が議論され、注目を集めた。大阪府の橋下知事は「(大阪センチュリー交響)楽団は、府民に根付いているのか。根付いていないと文化にはならないのではないか」という旨の主張をし、同楽団の補助金を大幅カットするなどした。滋賀県では、自民党系会派から「福祉医療への1億円と、びわ湖ホールのオペラへの1億円、どちらを取るか」との問題提起があり、びわ湖ホールの管理運営費が福祉医療予算と天秤にかけられた。
 また、横須賀美術館の建設に当たっても、大きな反対運動が起きた。そこでも保健福祉予算との対比が一つの焦点になっていた。(※3)
 これらの議論は、それぞれに固有の事情があり、一概に評することはできない。一行政家として、議論の表面には現れない幾つかの要件を想像することはできる。ここでは、ひとまず、多くの方が抱かれるであろう素朴な疑問を記しておくことにしたい。
 一、何故、しばしば、保健福祉予算確保のために、文化芸術予算の削減が唱えられるのか。
 一、「大衆に根付いていなくても重要な文化」というものはないのか。

 前提として、行政が何かを為すときの要件を確認しておきたい。私見では、以下の4点が必要条件である。(十分条件ではない。)
 一、公益性
 一、法的妥当性
 一、技術的妥当性
 一、有効性


ハラトモハル

(つづく)
  

※1 吉本光弘「再考、文化政策-拡大する役割と求められるパラダイムシフト」
   ニッセイ基礎研究所報vol.51から:
   諸国の2006年度文化関係予算(単位:億円)
    日:1,006(0.13%)
    仏:4,531(0.86%)
    独:1,010(0.25%)
    英:2,886(0.24%)
    米:982(0.03%)
    韓:1,782(0.93%) ※()内は国の予算全体に占める文化関係予算の割合

※2 文化庁「我が国の文化行政 平成22年度版」等から:
  文化庁予算:平成元年度 409億円→平成22年度 1,020億円
  自治体文化関係経費:平成5年度 9,553億円→平成19年度 3,328億円

※3 財政再建プログラム試案時、橋本知事の発言:
    http://www.pref.osaka.jp/gyokaku/zaiproshian/giron2_seibunn.html
   滋賀県文化行政資料(「こぐれ日乗」から):
    http://kogure.exblog.jp/6873835/
   横須賀市議会・藤野議員のサイト:
    http://www.hide-fujino.com/problem/artmuseam/index.htm」

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