Top > Media > [淡水録] vol.18 滋賀会館について

Media

淡水録

原 智治/Tomoharu Hara

1980年、京都市生。大学で画像情報システムを専攻。卒業後、メーカー勤務を経て、京都市入庁。現在は文化行政を担当。

Tomoharu Hara was born in 1980. He graduated from university where he majored in Image Information System. Tomoharu is currently works for Kyoto City, reforming the city's public hospitals.

[淡水録] vol.18 滋賀会館について

2009.03.03

 過日、シンポジウム「滋賀会館の放課後」に参加した。パネラーは、須川咲子(hanare)、高嶺格(美術作家)、根木山恒平(栗東芸術文化会館さきら)、山本淳夫(滋賀県立近代美術館)。滋賀会館のサイトには次のように説明が掲げられている。
 「アート現場で活動する様々な人々の活動事例を中心に、アートに関わることについて考えます。また、滋賀会館を含む周辺地域で何が出来るのか?参加者と一緒に可能性を探ります。」

 シンポジウムでは、パネラーがそれぞれの活動を簡単にプレゼンし、その後、意見交換が行われた。僕には、次の二つの発言が印象的だった。
 高嶺さん「作家はハコとではなく人間と仕事をしている。(一緒に仕事ができる)人がいることが大事」
 須川さん「いろんな要素のある変な場所で面白い。囲碁教室から現代アートの展示まで、地域の人が企画を持ち込んで何でもできる、二十一世紀型の公民館がつくれたらいい」
 何かのマネジメントを考えるとき、ソフト、ハード、ヒューマンの三つの要素があるが、いつでも最重要なのはヒューマンの部分だ。経験に裏打ちされた高嶺さんの発言は、シンプルだが重いと思う。

 質疑応答では、発言者から滋賀会館への愛情が表明された。正直なところそれを共有するのは難しかったが、シンポジウム後の"滋賀会館ツアー"により、僕も彼らの想いに同意することになる。
 屋上、最上階の映画館から順に、諸室を見て回る。会館全体が古くてスキだらけである。よく分からぬ青々とした空間が、ただ広がっている。かと思うと、文化サロン(喫茶店)があり、自民党支部や行政関連団体の事務室があり、地下には八百屋や魚屋(の跡)まである。緩い。今は使われなくなった大ホール、映写室、タイル張りのロビー。構造を捉えられぬまま、狭くて暗い廊下、県庁へ続くという廊下などをグルグルと見て回る。
 一口に言うならば、そこには、特権的な空間があった。ただ、それだけがあった。

 滋賀会館は、1954年に開設された県の文化施設で、今は(財)滋賀県文化振興事業団が管理している。所管は県民文化課。
 2007年の県の資料「滋賀会館のあり方について」※1では,滋賀会館の用途廃止が決定済みとされており、取り壊しにも言及がある。行政がここまではっきり書くからには、事が政治問題にでもならない限り、そのようになるであろう。滋賀会館は2010年3月末で無くなる。直近の滋賀県の文化振興に関する報告※2でも、文化施設活用についての記載があるが、滋賀会館には触れられていない。
 今後、建物のポテンシャルが発揮される可能性は、非常に低い。将来的な取り壊しは避けられないであろうし、それまでの最後の数年間も、行政の倉庫くらいにしか使われないかも知れない。

 滋賀会館のような場所は、全国的に見ても稀少であろう。たとえば、京大・西部講堂にも同様の自由があるが、それでも"我々"以外の誰かの手が入っていることを思わせる。東京で見た古いビルや、大阪の寂れた倉庫も、やはりそれは"我々"のものではなかった。
 滋賀会館は、そこに集まった者たちだけの、"我々"の秘密の花園を想起させる。明日から、ここで何かを始められるのではないか、という錯覚を抱かせる。大変な親密さだ。

 シンポジウム後、人々の集まった中華料理屋では、滋賀会館の今後のことが様々に述べられた。僕は、この建物に出会ったばかりだが、それでも、この場所があまりにも惜しいと言うことはできる。
 僕は最終的には人材がいればどのような場所でも面白くなり得ると思う。どのようにすれば、この建物に最期の花を咲かせ、この場所の空気を人々の記憶に残せるか。「次の滋賀会館を産むために」。おそらくそのように考えねばならないのだろうと思う。

 www.shiga-kaikan.jp/
 ※1 www.pref.shiga.jp/c/kemmin-s/shigakaikan/191003sigakaikansiryou.pdf
 ※2 www.pref.shiga.jp/shingikai/shiga_bunka/saishu.html

TOP