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地球日誌

熊倉敬聡/Takaaki Kumakura

慶応義塾大学理工学部教授。新たな学(び)のあり方に関係し様々な研究・企画を行う。現在フランスのパリを拠点に研究中。著書に『美術特殊C』、『脱芸術/脱資本主義』等。

Takaaki Kumakura is a professor at Keio University. His research theme includes new and experimental education. He currently lives in France for his research project.

[地球日誌] vol.07 インド旅行記(5)

2009.05.05

〈3月2日〉
 今日は、基本的に一日自由行動の日。8時半まで寝て、朝食後、洗濯。久しぶりにこの旅行記を本格的に書く。昼食は、Sri Aurovindoアシュラムの食堂で。民衆に安価で食事を提供しているようだ。
 部屋に戻り、再び日記。
 夕方、演奏会があるというので、向かう。Pondicheryでアテンドしてくれている初老のインド人のお宅のようだ。ドイツ人の若者が(インドのだろうか)木製のフルートのような横笛を奏するとともに、そのインド人男性が歌を唸り始める。二曲目からは、若者だけが演奏。久しぶりの生の楽器の音が体と心に沁みる。三曲目はアルメニアの縦笛。割れたような音。四曲目からは、ヴィオラを取り出し、サン=サーンス、ブラームス。ヴィオラの弦が心を奏でる。最後にアヴェマリア。ペーソスが体中に沁みわたり、思わず涙腺が緩みそうになる。
 夕食は、宿に戻り、ビュッフェ形式。フランス人のおしゃべりに付き合う。

〈3月3日〉
 朝食後、Pondicheryを出発。バスで次の目的地Thanjavurに向かうが、出発が例のごとく遅れたりで、予定より2時間遅い、6時ごろに着く。ホテルにチェックイン。いわゆるトゥーリスト用の特徴はないが豪華なホテル。今晩は、初めてアテンドに駆けつけたインド人男性(明日からの滞在先Spice Villageのスパのマネージャーだという)と相部屋。
 チェックイン早々、ブリハディーシュワラの寺院群に向かう。ユネスコの世界遺産にも登録されているこの寺院は、11世紀初頭にチョ-ラ朝中興の王ラ-ジャラ-ジャ 1世によって建てられたドラビダ様式の代表的建築。例のように、入り口で靴を脱ぐが、広大な境内が屋外ということもあって、裸足で歩くにしては床が汚い。あまり綿密に掃除してある感じではない。インド人にとっての「聖」とは必ずしも「清」を意味していないのだろうか。それにしても、唖然とする建築、そして彫像群だ。ピラミッド型の屋根に夥しい数の神々たちが様々な姿態をくねらせ絡まっている。聖性と官能の見事な和合。さらに唖然とするのは、その内部だ。まるで人間存在の"胎内"に入り込むがごとく、生ぬるく噎せるような濃密な空気のなか、積年のバターと香で不気味に黒光りしている彫像たちに見守られつつ、奥へ奥へと進む。なんと、最深部には、巨大な真っ黒いリンガムが花輪を幾重にもかけられ、しかも背後から五匹の巨大なコブラの雁首で包まれ、そそり立っているではないか。その、最も秘めたる核心にあるにも関わらず、あまりのあからさまな存在感に、開いた口が塞がらない。呆然とただみつめる。何か、人間が一番触れてはいけないものを、あからさまに突きつけられたかのよう。

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 広大な境内を取り囲む回廊にはやはり様々な大きさ形の黒光りするリンガムが多様な壁画を背景に何十本と立ち並んでいる。圧巻だ。夕暮れに、燕などの無数の鳥が飛び交う中、寺院群が荘厳に佇む。1000年前から変わらぬ光景なのだろう。

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