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[地球日誌] vol.05 パリから上海へ:ユーラシア大陸横断の旅(9)

2009.01.18


〈9月3日(水)アルマトゥ〉
 今日は、昨日まで歩き通しで精神的な疲れもかなり溜まっている気がしたので、無理せずゆったりと過ごそうと思う。
 10時頃起き、洗濯し、久しぶりにヨガをする。体が凝り固まっているのがよくわかる。久しぶりに爽快。
 昼ご飯は、昨日同様、向かいのバザールでケバブサンドとリンゴ4個を買ってくる。リンゴを丸齧り。昨日のイチゴ同様、味が濃厚で野生的でめちゃくちゃ美味しい。リンゴも人生で一番の美味しさ。アルマトゥは「リンゴの里」という意味らしいが、さすが。
 食後、たらたらと外に出る。特に当てもないが、とりあえず買い物(ノート、ペン、バス・トラム路線図)をしようと思う。巨大なシルク・ウエイ・ショッピングセンターならあるだろうと思うが、なく、結局この間もペンを買ったジベック・ジョル大通りの露天商からまた同じペン(今書いているペン。買ってすぐ失くしてしまったのだ)を買う(60テンゲ)。ノートは子供向きがほとんどで(大人はどこで買うのだろう?)、ふさわしいものが見つからない。ついでだから、まだ行っていなかった中央バザールに向かう。すっっごい!! 今まで世界でいろんな市場を見てきたが、これは三本の指に入るだろう。たとえば、馬肉コーナーなら、馬肉売りが店頭に馬の部位をぶら下げ、その同じような陳列=店が何軒も続いている。買う人はどうやって選ぶのだろうと思うほど。プレゼンテーションの仕方もほとんど同じ。肉、野菜、果物から始まって(魚は、やはりユーラシア大陸のど真ん中のせいかスモークと塩漬け以外の魚はなかった)、スパイス売り、朝鮮漬物店(だけでも30~40軒)。その青果市場を、雑貨市場が取り囲む。いろいろと買いたい欲望に駆られるが、買っても食べきれないのと、ホテルから遠いので、あきらめる。一階中央の青果市場を囲むように、二階にバルコニー型回廊があるので、上がってみる。一周するうちに、実はホテルを出てから探していてなかなか見つからなかった床屋を発見。店の人が片言の英語ができるので値段を聞くと、600テンゲとのこと。安い。早速お願いする。隣では、フットマッサージとネイルをやっているようなのでマッサージの値段を訊くと、20分=1500テンゲ。床屋に比べると高いが、ここアルマトゥでは毎日歩き通しだったので、自分への褒美をカネ、お願いする。久しぶりのマッサージ、実に気持いい。思わずうとうとしてしまった。

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 気持ちよく市場を出ようとすると、何と外は土砂降り! 傘も持っていないし、通り雨っぽいので、やむのを待つため、同じ階のカフェに入り、チャイを頼む。市場の閉店時間(6時)には、どうにか小降りになる。
 実に久しぶりの雨だ。いつ以来だろう。確か、カッパドキアの通り雨以来だ。やはり、この季節、中央アジアは乾いているようだ。
 ただ、歩き続けるにはまだそれなりに降っているので、通りをはさんだ向かいのカフェに避難。ミルクコーヒーを頼み、完全にやむのを待つ。30分ほどで完全に上がる。西から日も差してきた。
 そのままホテルに帰ってもよかったが、せっかくなので、コクトベという町外れの高台行きのロープウエイに乗りにいく。30分ほど歩き、乗り場に着く。片道で800テンゲ。『歩き方』に載っている料金の倍以上。バクーもそうだったが、ここアルマトゥでもこの2,3年で物価(特に観光に関する)が倍増しているようだ。
 ロープウエイに乗る。向こうに山脈が見える。何と、雪で覆われているではないか! はたしてキルギス/中国間の国境越えは大丈夫なのか。心配になる。高台から夕日が広大な水平線に沈むのを見つめる。かなり肌寒いので早々に下山する。

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 ホテルに戻る途中、例の「成城石井」のようなスーパーで、夕食を買う。ニシンの塩・油漬け、ハンバーグのようなもの、韓国風春雨サラダのようなもの、とパンを買う。どれも、スーパーの惣菜にしては美味しい。やはり素材がいいせいか。今日も手づかみ。右手で食べ物、左手で飲み物。慣れてくると、別に不便はない。袋からじかというのが味気ないが。

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〈9月4日(木)アルマトゥ〉
 10時に起きる。30分くらい瞑想する。宿を出、渓谷が美しいというメデウ高原行きのバス停に行くため、初めてトラムに乗る。20分くらい待ったか。バス停に着き、それらしきミニバスがいるが、他に客がいないので、交渉しているうち、タクシーでメデウの先のシンブラクまでの往復で4000テンゲでどうかという。空港から市内まで2000だったので、まあ妥当かと思い、そうする。
 急勾配を上っていくと、杉が天を刺すように伸びている。アルプスのごとき渓谷に入っていく。おそらく海抜2000メートルくらいはあろう。今、シンブラクの(夏は)スキー場のレストランで昼食中(客は自分だけ)。初ボルシチ(美味しい!)。初ビーフストロガノフを待っているところ。

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 タクシーの運転手の若者、純朴そうだったが、一万テンゲ札しかなかったので、さっき(昼食後迎えに来てくれるという約束で)往復料金をまとめて払ってしまったが、はたしてきてくれるだろうか。バクーだったら、無理だろう。

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 はたして、約束どおりにきてくれた。えらい。これ以上ここでやることもないので、アルマトゥに戻ることにする。相変わらず若者と互いに超片言の英語とロシア語の「会話」。国立中央博物館まで行ってもらう。カザフスタンの歴史を中生代から現代まで通して一応展示してある。解説はカザフ語とロシア語だけなので、全くわからない。展示は至って素朴。「現代」のコーナーは、単に現大統領の"自慢"であった。入場料は、『歩き方』には80テンゲと書いてあるが、何と1000テンゲ取られた。
 ふらふら歩きながらホテルに帰る。わざと知らない道を通って歩いたが、五日もいると体感的に町が把握できている。歩く姿も町に馴染んできただろうか。
 ホテルに戻り、まだ午後3時頃だったが、もう街中でやることもないので、部屋で瞑想とヨガをやる。
 明日から(ようやくウズベキスタンのビザの入国日なので)ついに移動開始。シムケントに夜行で行き、その日のうちに国境を越え、ウズベキスタンの首都のタシケントへ。できれば、その日中に、ウルゲンチ行きの夜行に乗る予定。久しぶりの列車での長旅だ。

〈9月5日(金) アルマトゥ→シムケント〉
 9時過ぎ起床。これからシムケント行きの列車に乗る夕方5時過ぎまでいかに時間を過ごすか。ゆるゆると身支度をし、爪まで切る。荷造りは慣れてしまったので、あっという間。ガイドブックを見ても、ほとんどの「見所」を見てしまったので、残っているのは国立美術館くらいか。フロントで荷物を預かってもらおうと思うが、預かれないらしい。代わりにチェックアウトが12時だから、それまで部屋に置いておけばと言っているようだ(もちろんロシア語かカザフ語で)。仕方ないから、そうすることにする。
 さて美術館。薄汚い薄暗い役所のような建物があるが、まさかこれが「国立美術館」?入口にも美術館らしき表示もないが、ガードマンらしき人がいるので訊くと、やはり美術館らしい。こわごわ入ってみる。入場料は100テンゲと安い。
 内部もとことん裏ぶれくすみ、死に絶えたような空間。これで「美術館」?しかも「国立」? 照明がないので、変だな?と思っていると、やがて「私のために」点けてくれた! かなり広いようだが、見学者は私が今日最初で、もしかすると最後かもしれない。見学者一人に対し、監視係が各部屋にいて(客がいなければ集まっておしゃべりしているのに)私がいるので、いちいち一応監視にだけはやってくる。目障りだが仕方ない。観ているのか見られているのか?
 作品は、一応16・7世紀~現代まであるが、ほとんどが「ロシア」絵画。名前を知っている画家はわずかレーピンだけだった。絵が床に直置きしてある部屋もある。とにかく、これまでの人生の中でどれだけの美術館に足を踏み入れたかわからないが、これは最も「死んだ」美術館だ。カザフの人たちは「アート」(少なくともヨーロッパ近代的な)を全く必要としないのだろうか。代わりに織物や彫金などヨーロッパ近代では「応用」美術とされてしまうものが、生活に必要だったのだろう。これほど国民から必要とされていない「国立美術館」は生まれて初めてだった。
 しかし、名前はわからないが(カザフ/ロシア語なので)、一人だけ興味を引く画家があった。彼専用の部屋があり、70~80点が展示されていた。クレーのカザフ版といった感じの画家だ。見入っていたら、監視のおばさんが最後に解説文を示してくれた。(もちろん全くわからなかったが)。少しうれしかった。
 ホテルに戻り、荷物をとり、ホテルのカフェで昼食。時間つぶしを兼ね、ビールを頼む。続々と近所の勤め人らしき人たちが集まってくる。どうやらここのランチが目当てらしい。私も、ビールの一杯目を終えた後、ランチに参画。まず念願のマントゥ(=饅頭)を頼む。ちょっと大振りだが、まさにショーロンポーである。噛んだとたん熱い肉汁がじゅわーとはこなかったが、合格点の味。次に、鶏の薄切りに玉ねぎとチーズがかかったグリルと麦飯(!)を頼む。400テンゲ! これなら人気があるはずだ。

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 ホテルから駅近くまでトラムで向かう。用心に用心を重ねたら、二時間前に着いてしまう。カフェでリンゴジュースを飲む。ようやく出発の時間が来る。車両に向かう。二人部屋の寝台だ。相手は気の良さそうなおじさんだ。よかった。荷物を収めるのを手伝ってくれる。また、お互いに超片言の英語/ロシア語の会話(こちらはもちろん『指さし』使用)。同い年だとわかる。握手。
 食堂車に向かう。ビールと例の「さきいか」状スモークチーズ、ボルシチにサラダを頼む。中年のおじさんと相席になる。『指さし』でちょっと会話。早々におじさん消える。今度は隣の席から押し出されて女の子が隣に座りに来るが、もう片言会話も疲れたので互いに無視。窓外の景色を落ち着かない気持ちで眺める。一面、ステップの草原。やがて日も暮れたので部屋に戻る。私もおじさんも話したいが、これ以上互いの言語能力では無理。でも時々、互いに気を遣ったりして、なかなか気持ちよく過ごせた。おじさんの仕事は、どうやらガラス職人かガラスメーカーの勤め人。ただ、鼾がうるさかった。それにしても、電車はすごい震動だ。今までで一番の震動か。車両は古いが(30~40年前製造?)、ルーマニアのそれに比べれば天国。タオルまで付いているし(もしかして二人部屋だし一等だったか?)。

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