[かわや版] vol.13 お札のひと
紙幣の人物が変わったのはいつ頃だっただろうか?ずいぶん前だったような感じもするが、意外と最近だったような気もする。周知のように、五千円は新渡戸稲造から樋口一葉に、千円は夏目漱石から野口英世になった。実世界と同様にお札の世界も女性上位になりつつあるようだ。それはさておき、3人の中で一番の顔見知りは千円札になるが、この間久しぶりに夏目さんと出会った。
お札になる程の文豪であるにもかかわらず、漱石文学の代表作でさえ読んだことがなかった。それで以前からずっと読んでみたかった。迷った挙句、『草枕』と『行人』を購入。前者を読み終えたのだが、存外に面白かった。柄谷行人の言葉を拝借すると、圧倒的な教養のあるアウトサイダーとしての作家像。大好きなオスカー・ワイルドと同臭の耽美主義的審美学が窺い知れる。正統という名の猫を被って、吾輩は猫である、と?グレン・グールドのように何度もとはいかないが、何度かは読み返したくなると思う。この一刹那!
紙幣に偉人を用いる文化はいつ頃からなのか、世界各国の紙幣に描かれているのは誰だろうと興味は膨らむ。日本の顔ぶれでは、壱万円の福沢諭吉が亡くなった母方の祖父とそっくりだった。ただ似ているというだけで、幼心に親近感を抱いていた。ところで、二千円札って全く見かけなくなったけど、何やったんですかねアレは。
[かわや版] vol.12 2008夏 J/A
楽しみな給料日も過ぎ、8月も終盤。個人的な今夏の思い出といえば、仕事柄、高校野球と北京オリンピックになるだろうか。まず高校野球だが、勝利に向けて一心に頑張る選手、必死に応援する友人らに思わずグッときた。中学でもなく大学でもない「高校スポーツ」は、高校生特有の純粋さが魅力だ。3年間バリバリの帰宅部だった我が身を省みると、余計にそう思う。
北京オリンピックもあった。今さら改めて述べることもないが、こちらはアマチュアの高校スポーツとは異なり政治色が強い。かつてナチスがベルリンオリンピックを政治利用した云々。だが、そうは意識していても日本選手の活躍に「よっしゃあ」となるように、スポーツには不思議な力がある。例えば、多木浩二が「ディオニソス的エクスタシー」と呼んだ力である。夏を振り返りながら、スポーツについて考えた。
とはいえ、アッという間の夏だった。気がつけば秋の気配が。少し暑さが和らいだかと思うと、夜は肌寒ささえ感じるようになった。暑さを増幅していたセミの鳴き声も減った。近所を散歩すると、宙で戯れるトンボが視界に入り、ぐんと延びた稲穂が風にそよいでいる。季節の移ろいに驚くばかりの今日この頃である。
五輪考 mix
Unknown/ 眼鏡蛇楽隊
Declare Independence/ Bjork
No Government/ Nicolette

Yohei Horiuchi
[かわや版] vol.11 Summer of Love & Peace
行ってきましたShing02歪曲ツアー京都巡礼。いやぁ~ヤバかった!楽しかった!!最高!!!会場はかなりの数のお客さんで鮨詰め状態。お待ちかねの彼が登場すると、すごい熱気と人口密度に。誰かに足を踏まれながら踏みながら、(女子と)肌が触れあいつつ踊った。ラッキー。久しく忘れていた感覚、踊りの喜びを感じた。「踊らぬ者は、生きるべき道を知らず」と聖歌にあるが、全身の毛穴全開で踊り何かを悟った一夜となった。今は無き学園祭の実行委員だった去年の今頃、ゲスト出演者の候補にShing02の名前が挙がっていた。オファーも出したみたいだが、結局、立ち消えになってしまった。もし実現していれば、さぞかし盛り上がっただろうに、と悔やまれるほど素晴らしいステージだった。
季節は夏フェス真っ盛りだ。俄然足を運びたくなっているのだが、解放感という点でフェスは夏に限る。夏になると、日常から自分を思い切り解放したいような気持ちが強くなりはしないだろうか。そんな想いを噴き出る汗に込めて、踊りという身体行為によって解き放つ場がフェスやライブ、あるいはクラブなのだと思う。そして、同じ時間と空間を共有することで、不特定多数の人との間に妙な一体感が生まれる。踊り狂った後の幸福感は、まさにLove & Peaceだ。年齢や職業を越え、音楽に合わせて隣の見知らぬ人と踊ったり歌ったりする。これって...盆踊り!?そう言えば以前、岐阜のどこかで行われる盆踊りは数日間にも及び、トランスパーティーみたいだと聞いたことがある。夏と踊りの関係はなかなか奥が深い。
ひっぷほっぷ mix
夜のヴィブラートKQ仕様/ Crazy Ken Band
Unknown/ 練マザファッカー
Hatsukoi/ 黒人天才
Rhubarb/ Aphex Twin
残暑お見舞い申し上げます。東洋一のサウンドマシーン・横山剣が、ライムスターに感謝の気持ちを込めてラップを披露。実はテレビでしか見たことないけど、結構かっこよかったので。日本語ヒップホップ「ケツトビ」核弾頭。全く関係ないが、先日亡くなられた赤塚不二夫先生を偲んで、同じく漫画家・ねこぢるさんが自分の葬式で流してほしいと語ったというアルバムから一曲。Rest In Peace
Yohei Horiuchi
[かわや版] vol.10 左京区に住まえば
仕事で一週間ほど京都府綾部市に滞在していた。京都に戻ってくると、コンコンチキチンの音色。そして、夜も寝苦しい独特の蒸し暑さ。夏だ。京の夏を実感しながら、ふと綾部での生活を考えてしまった。快適に過ごせたのだが、何と言うことはない地方都市で、京都市内に比べると当然娯楽も少ない。まだまだ煩悩を捨て切れそうにはなく、楽しみの少ない場所ではたして満足できるだろうか、と。
帰ってきてすぐ、とあるイベントにお邪魔してきた。yugueで開かれた「レコード寄席」。昨夏の東京遠征でも立ち寄った高円寺にある「円盤」の京都初となる出張企画だ。記録メディアとしてのレコードについて、幻の名盤、吉村智樹ばりのマニアックなレコード紹介を交えての面白いお話を拝聴した(途中で造形の学生がぞろぞろ来て満員御礼となったところで退散してきたのだが)。さらに、伊藤存率いる反重力ジョニーも出演する「UFO祭」、竹市雅俊×高木正勝らによる科学と音楽の夕べ「生命への視線」と続く。しかも自転車の行動範囲内で。左京区民歴24年、もちろん住み慣れたということもある。だがそれ以上に文化系の人間として、このまちを離れられそうにない。
アナログなレコードにも興味がある反面、最近、気になっているのがYAMAHAと岩井俊雄が共同開発した現代版テルミン「TENORI-ON」なる一品。去る2月、大阪で行われたビョーク嬢のコンサートで見慣れない機材が並んでいた。ずっと気になっていたのだが、ひょっとするとそれだったかもしれない。ビョーク以外にもアトム・ハートやハーバートなど錚々たる面々も注目しているという。ピコピコやってみたいものだ。
旅の思い出 mix
I heard it through grapevine/ The Slits
Since I've been waiting for you/ Mono
Make my day/ 新垣結衣
寝起きが悪い朝に。噂では、写真家・ハービー山口も在籍していたという伝説のガールズバンド。音もジャケもニューウェーブ。寝る前に一日を振り返って。日本ポストロック界の至宝は、静けさの内に暴力性を秘める。旅の途次、車窓から田園風景でも眺めながら聴きたい一曲。ガッキー断固支持です。
Yohei Horiuchi
[かわや版] vol.09 伏見の酒を求めて
8日ぶりの休みを利用して伏見へ。京阪「伏見桃山」で下車、大手筋商店街を通り抜け、歩くこと約5分。お目当ての「藤岡酒造」に到着。酒どころ・伏見には「月桂冠」など大きな酒蔵も多いが、ここのお店はこぢんまりとしている。実際、従業員は社長、奥さん、お母さん、アルバイトだけ。というのも、13年前(と言えば阪神大震災)に一度は蔵を閉じているからだ。しかし、5代目にあたる現在の社長が脱サラして、6年前に酒造りを再開したそうだ。評判も上々で、休日には遠方から訪れるお客さんもいるらしい。また、店内には囲炉裏とカウンターの飲食スペースもある。
早速、掘り炬燵式のカウンターに座り、醸造タンクをガラス越しに眺めながら、テクノ界の重鎮リッチー・ホウティンも惚れ込んだという「蒼空(そうくう)」の純米酒、純米吟醸酒、そして甘酒をいただいた。正直、お酒に関しては素人なのであまり参考にはならないが、蒼空はその字の如く、口当たりがよくすっきりとしていて飲みやすかった。冷やし甘酒は、ヨーグルトのようなさっぱりした味でとても美味しかった。お酒好き、日本酒好きは一度ご賞味あれ。帰り際、社長のお母さんと立ち話をしたが、これがまた気さくで面白い方だった。最後に思わぬ出会いもあり、酔いも少し回ってきて帰りの車中はいい気分だった。
ところで、お酒が美味しいと感じるようになったのはいつ頃からだろうか?例えばビールにしても、子供の頃は苦くて飲める気がしなかった。が、社会人となった今は仕事終わりの一杯が格別に美味しいと感じるのだから味覚というのは不思議なものだ。学生と社会人の違い、社会に出ると厭なことも面倒なことも多くなる。そんな時は、お酒が明日への活力を与えてくれることがある。酒は憂いの玉箒。ただし、飲み過ぎにはご注意を。
Yohei Horiuchi
hanare September 24, 2008 08:32 PM