[かわや版] vol.32 下鴨上ル下ル
「憂き世をば 今ぞ別るる とどまらむ 名をば糺の 神にまかせて」。現実逃避したくなるようなこの暑さでは、出歩くなら近場に限る。帰省中のお盆、これ幸いにと、下鴨神社の糺の森であった納涼古本まつりに向かう。森の木々が夏の日差しを遮ってくれるおかげで、げんなりする暑さを忘れて掘り出し本選びに没頭できるのがありがたい。別段、買う当てもなく、ぶらぶらするのが楽しい。この日は結局、2時間ほど物色し、「SWITCH」のヴィンセント・ギャロ特集号を購入。京都書院から画集(品切絶版)が刊行されている、とは知らなかったが。
糺の森では99年前の夏、旧制3高の生徒たちがこの隠遁の場所で初めて楕円球に触れたとして、関西ラグビー発祥の「第一蹴の地」と刻まれた石碑が残る。その年の秋には3高に日本で2番目の蹴球部が誕生、その後、同志社大、同志社高、洛北高と創部が相次いだ。下鴨神社から下鴨本通りを上がった松ヶ崎には京都ラグビーの聖地、宝が池球技場がある。話が脱線したが、7人制ラグビーが新たな五輪競技に選ばれた報告を済ませ、糺の森を後にした。
神社の東に位置する谷崎潤一郎の旧邸「石村亭」へ。糺の森が目と鼻の先だけあり、谷崎もよく森の小径を逍遙しながら小説の構想を練ったという。垣根の隙間から彼のお気に入りだった庭を眺め、河原町今出川下ル「カフェ工船」に移動。馥郁なコーヒーと、いずれもモノクロのカストロのポスターにリタ・ミツコのレコードという塩梅である。後ろ髪を引かれつつ、一路北へ進む。懇意にしている「のらくろ」に立ち寄り、いつものトルコライスを注文する。オムライスに一口カツを乗っけただけのシンプルな味にファン多し。それから、やなぎみわ宅を勝手に探訪し、これまたいつもの「アミーゴ書店」で立ち読みしてから帰宅した。
今年の夏の過ごし方は、車で遠くへ出かける人もいれば、来る総選挙に向け奔走する人と様々だろう。閉塞感漂う日本の行く末を占う選挙まで、あと9日。政権交代の応否に関わらず、この国の将来は、神さまでなく、有権者の1票に委ねたい。

警察だ、麻薬現行犯で逮捕する mix
Knocking on Heaven's Door / Bob Dylan
呑めし feat HOOT/ stillichimiya
24 Hour Party People/ Happy Mondays
自称カート・コバーンの生まれ変わりもカバーしていた名曲。愛と平和の祭典から40年、みうらじゅんの自伝的青春映画「色即ぜねれいしょん」の公開も記念して。23日は安土町長のリコール投票だが、こちらは山梨県の旧一宮町の合併反対のため結成されたユニット。「悲しい酒」のリフと甲州弁の生む独特のフロウが奏でる平成大合併、地方分権への叫び。のりピーも胎教にヒップホップを聴いていたとかで、今年の夏は山梨が熱い。キメキメのパーティーピープルたちに捧げる。マッドチェスター・ムーブメントを描いた曲名と同じ映画もついでに。
[かわや版] vol.31 司馬遼太郎記念館
近所の本屋さんを覗くと、平積みにされた特集コーナーが2つ。村上春樹の新作小説「1Q84」と、先頃、生誕100年を迎えた「太宰治」。日本を代表する新旧の作家が人気を集めている。そこで1冊を手に取ってみたい気持ちをグッとこらえ、2人の時間差を埋める司馬遼太郎の文学記念館に足を運んだ。大学だけでなく仕事の先輩でもあり、その紀行「街道をゆく」の書き出しの地に住む間に、いつか訪ねてみたいという漠然とした思いがあった。
ラグビーのまち、東大阪の住宅街の一画に、記念館はひっそりと佇んでいた。無数の蝉がけたたましく鳴く緑豊かな庭。庭に面した書斎を通り抜けると、安藤忠雄設計の建物が現れる。さらに館内へと進むと、壁一面の本棚が目に飛び込んでくる。頭の中を具現化したような、ガケの如きそれは圧巻。一見の価値ありだ。休日ではあったが来館者も多く、国民的作家の偉大さの一端に触れることができた。NHKのドラマ化が物議を醸している「坂の上の雲」にちなんだ企画展「『坂の上の雲』が書かれた書斎風景とその時代」も開催中。余談になるが、道端で猫をたくさん見かけた。猫が多い場所は、人間にとって住みやすい環境が整っているんだとか。
大学時代、間谷祭実行委員だったのだが、どうもおかしな人たちが集まってくる伝統があるらしい。最近のゲストを例に見ても、OKI、Ett、FRATENN、neco眠ると、音楽好きがにんまりする顔ぶれが並ぶ。大学関係では、古川タクや法然院の梶田住職、エルマガの編集者、非常階段のシルクも卒業生である。しかし、大学統合の波にのまれ、母校はもうない。卒業した年が最後の間谷祭だった。今となっては、母校の消滅はともあれ、アナウンサーとグラビアアイドルの同級生と接点の「せ」の字もなかったことが悔やまれる。最後に、そんな間谷祭のパンフからいくつか引用しておこう。
戦争ではいつも皆誰かを失った。いつでもそれが人間にできることだった―George Orwell
最後のお祭り、悔いのないようにはじけてくださいね。思いっきりはめをはずしてください。きっといい思い出になります。中途半端はいけませんよ。人を傷つける事以外なら何でもやってください。年をとって学生時代の思い出がそれだけなんてすてきじゃないですか―内橋和久
蝉は、やがて死ぬる午後に気づいた。ああ、私たち、もっと仕合わせになってよかったのだ。もっと遊んで、かまわなかったのだ。いと、せめて、われに許せよ、花の中のねむりだけでも―太宰治

大阪害大 mix
エスタシオン/ カルマセーキ
Unknown/ 内橋和久とダブ平& ニューシャネル
Diakutumeni/ Sakaki Mango & Limba Train Sound System
維摩の一黙/ Ett
軽音楽部発、フジロック行きの4人組みロックバンド。伸びやかなボーカルと塚さんのビジュアルが味噌。間谷祭にはカルマ喫茶を出店。渋さ知らズやUA、くるりなどのギターを担当する内橋さんと、大竹伸朗とのセッション作。19やPuzzle Punksを彷彿とさせるジャカジャカ系インスト。アフリカの親指ピアノを操る。アンプをつないで電気化させた大音量にドラムとベースが加わり、テクノやダブ、ファンクとも呼べるビートに。混乱が続くコンゴでは、そうした民族ごとの先祖返り的ポップスの爆音が夜空に響き渡るという。花電車でも活躍したギターのKeiさんはスウェーデン語卒で、Ettはスウェ語で「ひとつ」を表す。カタカナをほとんど含まない純日本語詞により、心の機微や季節の情景を詩的に歌い上げる。
[かわや版] vol.30 屋上にて
空が低い。眼下には、旧東海道沿いに大津の街並み、そして余暇を楽しむボートやらが浮かぶ琵琶湖も広がる。先日、滋賀会館であった屋上ピクニックにお呼ばれしてきた。晴天の午後2時過ぎ。参加者が持ち寄った逸品を囲んでピクニックが始まった。初夏の湖風に当たりながら、滋賀会館のシネマホールのファンクラブ代表らと歓談、あっという間に3時間が過ぎ、お開きに。集まった面々の個性はもちろん、屋上という場所、それがよかった。
僕にとっての思い出の屋上となると、高校時代によく通った大丸京都店が思い浮かぶ。予備校が始まる前にふらふら立ち寄って黄昏時を過ごした記憶が。昔ながらのファミリー食堂にペットショップ、それにお花屋さん。何を隠そう、大学時代に屋上でのバイトに憧れて面接を受け、ものの見事に不採用になったお店だ。緑の広場もあり、街中にありながら、ゆるやかな時間が流れている。俗に言う「都会の喧噪」とやらを忘れることができる。
ところで、今でこそ屋上緑化ブームで開かれた場所になった感がある屋上だが、本来は構造的に隠蔽された閉塞的空間である。伝説のカルト映画「追悼のざわめき」然り、そこには非日常性が漂う。だからか、前から気になっていた。そして、不良性。松本大洋の「青い春」ではないが、大人の階段のぼった先にある怪しい磁場にひかれるのだ。これを機に屋上巡りをしたいと思っている。6月も半ば。半袖で過ごす日も増えてきた。これからの季節だと、まずはビアガーデンで決まり。

花、空、風、太陽 mix
花/ ASA-CHANG&巡礼
Your Hand in Mine/ Explosions in the Sky
風の谷のナウシカ/ 坂本龍一+嶺川貴子
ありったけの愛/ Theatre Brook
東京スカパラダイスオーケストラの元リーダー。新しい音楽の方法論を求める教徒たちに捧ぐ。ギターとドラムによるインスト・ポストロックバンド。荒々しい轟音の先にある平静へと昇りつめる時間軸を感じる。教授のアレンジらしい微風のようなウィスパー・ボイスは、小山田圭吾の奥さま。こちらも独特のファンキーな歌声が印象深い佐藤タイジ。太陽は、ありったけの愛だけでできている。あると思います。
[かわや版] vol.29 バナナミルクマン
ハマってるんです最近。仕事帰りに近所のコンビニ寄って、翌朝の食料を調達するのが日課なわけだが、御用達の「セブイレ」の品揃えが何気にいいのだ。例えば、「練乳クリームフランス」や「いちごジャム&マーガリン」、ヤマサキの「スナックスティック」と、他のコンビニに比べ菓子パンのクオリティーが高い。おかげで、パン派の僕は毎朝いい気分なのである。さらにうれしいことに、白バラとバナナミルクを陳列している。健康にいいから「牛乳飲みなさい」たら、朝食には「バナナがいい」とか云々。ならいっそのこと一緒に摂ればと、一石二鳥の飲み物なのにどういう訳か大半の店舗が取り扱っていないのはなぜ。バナナミルク愛飲家は少数派なのか。
映画好きの友人がお薦めしているのが、ガス・ヴァン・サントの新作「ミルク」。主演男優賞など8部門がアカデミー賞にノミネートされた話題作だ。1977年、自らゲイであることを公言し、サンフランシスコ市議会議員に当選したアメリカのユダヤ人政治家、ハーヴェイ・ミルクを描いている。詳しくは映画に譲るとして、現在の性的マイノリティを取り巻く環境はどうだろう。ミルクが活躍した時代から30年経たカリフォルニア州では昨年、同性結婚が禁止に。また、宗教的な理由から死刑が適用される国もあるという。ただ、ネットの普及により、同性愛を含め性に関する情報は格段に増えた。日本でも2000年以降、カミングアウトするタレントが増えている。同性愛に対する差別や偏見は根強いものの、少しずつオープンになりつつあるように感じる。一方、性の情報化で失われたものも大きい。割礼漫画「昭和の中坊」を熟読しながら、徒然なるまま。

Legalize Gay mix
Sunday Morning/ The Velvet Underground
Young Man/ レイザーラモンHG
Gayboy/ FUTON
Tears/ Frankie Knuckles Pres. Satoshi Tomiie feat. Robert Owens
底抜けに気だるい。ねぼけ眼をこすりながら朝食をいただきたい時のBGMに。PTAの猛抗議のせいかめっきり見かけなくなったが、HGの果たした功績やいかに。すべての道は二丁目に通じるとか。元スウェードのドラマー、サイモン・ギルバート率いるタイ発の多国籍バンド。身も蓋もないエレクトロ。ゲイ・カルチャーとは切っても切れないハウスミュージック界の重鎮らによるハウスクラシック。
[かわや版] vol.28 いくつになっても
悲しいかな余白ばかりの予定帳。こうもスケジュールの詰まっていない自分のことは棚に上げ、民族大移動の大型連休は自宅でゆるやかに過ごすつもりだった。だが結局、地元の友人の唐突な誘いで、帰省中の同級生とはしご酒に。中には10年ぶりの面子もおり、予期せぬ再会に飲みのピッチも進む。とりあえずのビールに始まり、フロイグ、ギムレット、景気づけにテキーラも。飲み過ぎで翌日後悔するパターンはいつぶりだろうか。ゆるやかな休日はどこへやら、ゆるんだのは財布の紐とぽっこりお腹だけ。
集まったメンバーは、営業マン、公務員、針灸師のたまご、カフェ店員、ミュージシャンと幅広い。聞けば、皆それぞれの分野で夢に向かって突っ走っているようだ。酒宴は興味津々の他人の人生を酒の肴に盛り上がる。失われた10年の味はほろ苦い。しかし考えてみると、こうしてまた旧友と巡り合えたり、思わぬところで誰かとつながっているのは何かの予定調和だろう。飲みの場でも話題に上っていたが、年を重ねると変わらねばならないことがある。けれど、変わらないことも時には必要である。修中のノリのように。
音楽業界では、反骨魂を貫いた忌野清志郎が逝った。格好いい大人を見せられる数少ない存在だっただけに残念でならない。WARPをはじめ90年代以降のグラフィックデザインを牽引した「The Designers Republic」の倒産と同様、驚きと寂しさともに一時代の終焉を感じさせる。YouTubeでハナレグミやウルフルズ、RHYMESTERとの共演映像眺めながら、一人追悼ライブは続く。偶然見たNHKの特番で、「夢は?」と尋ねられ、「世界平和かな」と答えていてなるほどなと。夢想音楽家は世界を救えるか否か。「一人で見る夢は夢でしかないが、誰かと見る夢は現実になる」(オノ・ヨーコ)との言葉を思い出す。
当たり前すぎてしばしば忘れがちだが、人は生まれた瞬間から死へ向かう。しかしながら、その最も確実な「予定」は予定帳には記されていないのだから始末が悪い。

インディゴブルー mix
Never Change/ Ryusuke Muto
Unknown/ DJ YAN-YAN
バニーガール/ スピッツ
一乗寺・修学院応援歌。カッパのオッサン!こんな曲作れるなんて同級生であることを誇りに思います。23日のN.A.S.A. Japan Tour @LAB.TRIBEでもDJを務める。「MoMAk Films @Goethe」に加え、久々のクラ部活動とは楽しみな誕生日になりそうな予感。プチ同窓会で「オアシス・ブラー戦争」ならぬ「ミスチル桜井・スピッツ草野戦争」が勃発。詞の世界観は相変わらず。「うめぼし」「おっぱい」「猫になりたい」「名前をつけてやる」等々好きな曲は数あれど、みんなで熱唱したこれ。
hanare August 21, 2009 12:03 PM