[かわや版] vol.37 とろろ昆布を備蓄せよ
プルトニウムとウランを混合したMOX燃料を原子力発電で燃やすプルサーマルが今月、国内で初めてスタートした。これは政府が推進する核燃料サイクルの実現に向けた取り組みの一環であるが、燃料となるプルトニウムは原発の使用済み核燃料から取り出される。わが国のエネルギー供給を支える原発。近年、石油価格の高騰や地球温暖化の深刻化を背景に、原発を支持する気運が高まっていると聞く。特に火力発電に比べ、地球温暖化の主要因とされる二酸化炭素を排出しないという点で、地球環境にエコ・フレンドリーなエネルギー政策との認識があるようだ。
一方で、反原発、脱原発の声も根強い。というのも、プルトニウムは核兵器の原料になるからである。それだけに余剰プルトニウムを保有しないことが国際的に求められており、その延長に核燃料サイクルの考えがある。矛盾するようだが。しかし、2重のリスクを負ってまで原発に頼る必要がそもそもないのではと思う。加えて、安全性の問題も大きい。国内の原発の多くが今後、運転開始から40年を迎えて老朽化が進む。万が一、億が一にも大地震が起きればどうなるか。原発の耐震性を問題視する声は多い。
ところで、原発賛成派ではないが、巷では「エコ」や「グリーン」といった言葉が氾濫している。景気が悪くても、某エコカーの新車販売は好調とか。しかしよく考えてみると、新車の製造段階で二酸化炭素は出るはずだし、何より耳障りのいい言葉に隠された単なる経済振興策、消費者の良心を利用した金儲けという一面も忘れてはいけない。エコとエゴ。町田康もどこかで書いていたけど、エコとの距離感は改めよう。そして、仮にもし臨界事故が起きた場合、放射能にどう対処すればよいか。物の本によると、ヨウ素を多く含んだ食物が効果的という。ですから、ご家庭でのとろろ昆布の備蓄を。

Weapons of Mass Discussion mix
Rushup I Bank 12/ The Tuss
Actionist Extension/ Mouse on Mars
11/ DODDODO
Aphex Twinの主宰するレーベルから現れた謎多き新人さん。新顔でこの音の完成度は半端ない。音響やエレクトロニカ、テクノ、ロックを再構築する、ドイツを代表するポップ・ユニット。何度聴いても1曲には聞こえないお得感あり。関西ブレイクコア・シーンのディーバ。聞き覚えのある唱歌や童謡などのにほんのうたが、爆音ドラムの向こうに。反体制ともとれる挑発的な歪んだ遊び心がグッとくる。踊りも上手い。出演映画「尻舟」の上映ももうすぐ。
Yohei Horiuchi
[かわや版] vol.36 音楽で遊びつくせ
にしても、ここひと月は毎週のようにあちこち出歩いた。一応、音楽担当ですから、たまの休日とて家でゴロゴロなどしていられない。10月10日。「堀川中立売」の上映と勘違いして行ったみなみ会館で、地元で噂のHarp On Mouth Sextetを見る。だが、電子音楽と伝統音楽が邂逅した雅なダンスミュージックも睡魔には勝てず。関連イベントで17日、メトロにて。目当てだったJackie-O Motherfuckerのサイケ全開なライブとフルカワミキのゴリゴリDJセットに大満足するも、翌朝の市議選取材のためRatvilleの出演前に撤収。にしても、CKBの由来にもなったミカバンドやフォークルがかからなかったのはどうして。
24日は気分転換に大阪まで足を伸ばす。毎度のことながら、見上げるばかりの梅田の高層ビル群に圧倒されつつ会場のビルボードライブ大阪へ向かう。2年前に17年間続いた大阪ブルーノートがリニューアルして誕生した、食事も楽しめる高級ライブハウスを初体験。この日の主役は、生演奏を交えたジャジーなヒップホップで名を馳せるCrown City Rockers。5人とも皆粒ぞろいで、中でもベースとドラムのソロに痺れる。にしても、着飾った上品な客やカップルの多いこと。場違いな感じは否めなかった。
11月3日に京都造形芸術大の瓜生山祭で。楽しみにしていたテニスコーツやneco眠るも悪くはなかったけれども、なんと言ってもd.v.dが別格に素晴らしかった。2ドラム、1ビジュアルというちょっと変わった編成で、音楽と映像を融合させた踊れるポストロック・バンドを堪能する。とにかく勢いがあって格好いい。つべこべ言わずに生のライブを見るべき、とだけ言っておこう。にしても、同日夕に京都国際マンガミュージアムで行われた、タムくん×細野晴臣=音とアニメ。かぶりすぎ。
この1ヶ月の間、加藤和彦さんの自殺やノムさんの退任と京都人としては悲しい出来事が続いた。森茉莉や中上健次らの臨終を紹介した「知識人99人の死に方」を読み返しながら死に際、引き際について考える。歯に衣着せぬ破天荒ぶりで、死ぬまでスケベ心を失わないままヘンコを貫き、都築響一をしてファックオフじじいと言わしめた稲垣足穂が強烈。その遊び心にあやかりに、紅葉狩りは谷崎潤一郎や九鬼周造も眠る法然院に行こう。

Welcome to Kyoto mix
Funky Blue Note/ Madlib
Sweet Euphemisms/ soso
Spinnin'/ Speech Debelle
Sleepy Dinosaur/ Flying Lotus
アンダーグラウンド・ヒップホップ界の奇才による名門レーベルの音の形成外科。大の嵐山好きを公言しており、ジャケも日本で撮られたようだが、「はと豆」ってどこや。美しいピアノの旋律と轟音ドラムの後の小鳥の囀りが泣ける。ヒップホップ界のレナード・コーエンと評されるのも頷ける。Big Dada期待のフィーメイル・ラッパー。繊細な声と詩の世界観に好感が持てる。スペイシーでコズミックなキラキラしたビートが乱れ飛ぶ。その宇宙観は、叔母のアリス・コルトレーン譲りなのかも。
Yohei Horiuchi
[かわや版] vol.35 イイネ イイネ イーネ!
かわいい大人になりたい。CKBの横山剣を目にする度に思う。先日も深夜番組を見ていたら、瞼をひっくり返しながらぴんからトリオの「女のみち」をリコーダーで吹くという珍妙な特技を披露していて、思わず声に出して笑ってしまった。東洋一のサウンドマシーンを自称するミュージシャンとしての才は言わずもがな、忌野清志郎やリリー・フランキーにも共通するC調な感じがいい。くどいようだが、05年新京極映画祭の安田謙一とのトークイベントにて整理券番号「1」を獲得し、入場時に握手してもらったことがある。P-Vine Booksからの近刊で思い出したけれど、根本敬や野坂昭如はこの人の影響で知った。
剣さんといえば、ファッションへの独自のこだわりを連想する。誰しもモテたい願望は大なり小なりあるわけで、そのためにはオシャレを疎かにできない。流行に乗り遅れぬよう人一倍気を使わねばならない我が身であるが、実情はそうでもない。この春夏にいたっては、B.V.D.と古着の仏軍の下着を買ったのみだ。締めて1万円といったところだろうか。前者の愛用者として知られるのが、ダウンタウンの松本人志。笑いのセンスは真似できないならば、せめて格好だけでも。とまぁそんなことから身につけてみると、楽で着心地が良い上にシンプルなデザインが気に入り、夏場は専ら下着で過ごす。
この前、みなみ会館であったイベントの情報によると、話題の映画「堀川中立売」の見どころの一つが、主演の石井モタコ(オシリペンペンズ)のブリーフ姿という。ごっつで松ちゃん演じるアホアホマンもブリーフ着用だった。深愛するヴィンセント・ギャロがグンゼの白ブリーフを愛用しているのは、以前にも書いた。しかし、たかがブリーフと侮るなかれ。同社のモデルでは、松田優作やオダギリジョーも名を連ねているぞ。芸術の秋。京都の美術館巡りに出かけるなら、合わせてワコールの「ミュージアム・オブ・ビューティ」と、グンゼの「グンゼ記念館」もお忘れなく。

秋りんご mix
Velvet Cave/ Silver Apples
Tomorrow Never Knows/ The Beatles
尖った手口/ 椎名林檎
前述のトークイベントで、極限修行を呼び掛ける某宗教団体の物真似で会場を盛り上げた剣さん。テクノの元祖とも称される、ドラムと自作のアナログシンセが生む怪しい高揚感はある意味で宗教音楽かも。デジタルリマスター版が出ました。シタールなどインド音楽の影響を受け、実験性と革新性において頂点に君臨するであろう。立命館大の学園祭に行ったのがちょうど10年前。進化してます。コトリンゴのライブは31日にSOLE CAFÉ。
Yohei Horiuchi
[かわや版] vol.34 きれいなおねえさんは、好きです。
世の女性たちが選ぶ好きな男性のタイプでは、ギャップのある人を筆頭に、爽やかな人、清潔感のある人などの支持率が高いらしい。他方、気になる嫌いなタイプは、めんどくさがりな男、ガリ勉野郎、自意識過剰な奴が不人気ランキングの上位を占めるそうな。なるほど、道理で。非常に耳の痛い話だが、首肯するしかあるまい。ところで、憚りながら質問させてもらうと、「足が速い」とか「背が高い」っていうところは評価の対象外なんでしょうかおねえさんたち。それが通用するのは、例えば、運動会のリレーで活躍してちやほやされるなんてのは、せいぜい中学生までとわきまえておくべきなのか。
中学時代までとはいかず、ずっとケイゾクして憧れているのは、4代目きれいなおねえさんの中谷美紀。その佇まいには内面からにじみ出る美しさがある。女優以外に歌手の顔も持ち、当時買ったCDは棚の奥で眠っている。彼女のエッセイも好きで、「papyrus」を楽しみにしているのだが、最新号にリトルモアから写真集(撮影・若木信吾)が出るとあり、早速チェックした。滋賀県がロケ地の一つだったり、磨崖仏が写っていたりと興味深い。白州正子の「かくれ里」では、わが栗東市の金勝山が紹介されているし、中谷が敬愛する志村ふくみも近江八幡市出身だ。微妙にゆかりがあるのにかこつけて、3代目滋賀ふるさと大使にと淡い幻想を抱く。そんな今日この頃、気になっているきれおねは、モデル兼歌手の忍田彩。きれいなおねえさんは、好きですか。

秋の夕焼けは、さくらんぼフレンズ mix
I Can't Stand it/ The Specials
Women's Realm/ Belle & Sebastian
Heartbeat/ Tahiti 80
The Endless Polyrhythm Lovers/ Perfume VS Cherryboy Function
スカの定番といえば、この人たちを置いては語れない。中でも儚くも切ないデュエットが耳に残るこの曲は今でも大好きです。思春期の中学生も反抗を一休みして感傷に浸るしかなくなる。ジャケットに写っている見覚えのある女の子は、元MUMのアンナ姉妹。当時、一世を風靡した彼らの代表曲。ついつい口ずさんでしまうキャッチーさは色あせず。いわゆるマッシュ・アップ。音的にも食い合わせは悪くなく、冴えない中坊のアイドル症候群に対するオマージュとも深読みできる人選もいい。
Yohei Horiuchi
[かわや版] vol.33 つながるつなげる
先の衆院選直前、吉見俊哉の「ポスト戦後社会」と、鈴木謙介らの「文化系トークラジオLife」をやっと読んだ。前者は、ポスト戦後すなわち、高度経済成長期から今日に至る日本の過程を概観したもの。学生運動の終焉を象徴するあさま山荘事件に始まり、豊かさを追い求めた高度経済成長、そしてグローバリゼーションの進展による新自由主義国家への体制転換。その一方で、浮き彫りとなった地域の疲弊や格差の拡大・・・等々。こうした諸問題に直面し、既存の政治のあり方、つまりは自民党の保守政治が担ってきた政治システムに対する再考を問うたのが今回の選挙であり、すべてリンクしているんだなと今さらながら痛感した。
後者はというと、2006年からTBSラジオで放送している同名番組を書籍化したものである。番組ではいろんな世代のリスナーを巻き込みながら、バブル崩壊、若年層の右傾化、オウム真理教の事件、憧れの男女、セカンド・サマー・オブ・ラブ、ロスジェネ、労働問題などのテーマについて、鈴木や森山裕之、佐々木敦といった面々が語り合う。「文化系」と冠するだけあって、音楽や映画、漫画、アニメの記号に溢れ、とても人ごととは思えず一気に読み終えた。パーソナリティーとリスナーの素敵なおしゃべりに触れ、自分もこのままでいくぞ、と妙な開き直りの読後感に浸る。
「この番組はやっぱり若い人に聞いてほしい」と鈴木。畑は違えど、社会といかにコミットするかにおいて、自分は文化系の素晴らしさを伝えきれているかと疑問符が付いた。言い換えれば、文化系ウイルスの感染者拡大に貢献できているのかと。仕事のやりがいという面では、とあるリスナーからのメール--大学時代に部室や安居酒屋でさんざん議論した、自分の価値観とは何なのか、世の中で起きていることってどうなのよ、という「役に立たない議論」。確かにすぐに役に立たないんですが、生き方そのものを考えるというのは案外貴重な経験で、社会に出てしまえば、そんな議論をする機会などなくなってしまいます。ですが、そのまま働き続けて行き詰まった時、疑問を感じた時に、改めて自分の立ち位置を俯瞰して見たくなる時が来る。そういう時に、学生時代の「役に立たない議論」が、逆に役に立ってくるのではないか。
とはいえ、刑事訴訟法やら自治体財政健全化法のお勉強で手いっぱいの自分自身を含め、多くの社会人は「役に立たない文化系トーク」をやる気も元気もない状況に置かれがちだ。でも、そんな時こそマントラのようにこう唱えましょう。やる気 元気 いわき!

文化系が世界を変える mix
Output Dots/ Ratville
I have a ghost, now what?/ Jaga Jazzist
Oh! RADIO/ 忌野清志郎
There is a light that never goes out/ The Smiths
この夏に見た唯一のライブで存在感を示した、知り合いの知り合いの3ピースバンド。ハードコアなダブを基調としながらも、ノイジーなギターがカオスを増幅させるロック寄りの。8月19日をもって閉店した北白川の丸山書店のCDショップ。北山の「優里奈」とともに、どんだけ通ったことか。涙の閉店セールで買った最後の1枚は、生演奏でロック、ジャズ、エレクトロニカを横断するノルウェーのビッグバンド。皮肉にも、11月に近くの造形大でライブがあるなんて(ちなみに、内橋さんのAltered Statesやテニスコーツ、夏に見逃したd.v.dも。そのまたちなみに、「りんご音楽祭」、「TAICOCLUB」、「DE LA FANTASIA」、「BOROFESTA midnight」、「electraglide」も)。新井英樹の漫画「The World id Mine」のセリフ「先に生まれた者が、後から来た者に人間は素晴らしいと、伝えられずにどうするんだ」。清志郎さんが最期に伝えようとしたのは、ラジオから流れる愛のある歌。鈴木がラジオで伝えようとするのは、「希望の話」。消えない光があると信じて。
hanare November 24, 2009 06:04 PM